頭の中のカメラ

昔、主人公の記憶が日々薄れていく
「頭の中の消しゴム」という映画があったけど、
今回は、その逆のお話。
油断すると、平坦になってしまいがちな日常生活の中で、
自分の意思とは関係なく、心にくっきりと光景が焼き付けられる…。
そんな経験ないですか?
私は、つい最近、ありました。
先週金曜日の夕方、保育園のママ友と
うちの娘を習い事に送っていく途中のこと。
おしゃべりしながら、私は車を運転してたのですが、
ふと目線を遠くにやると、
道の両側にそびえる高層マンションの隙間からのぞく、
赤々と美しく燃える大きな夕陽。
あまりの感動に、時間が、一瞬止まってしまいました。
頭の中で、シャッターボタンが押されたようで、
時間が経った今も、目を閉じるだけで、
あの夕陽がはっきりと再現され、
どことなく浮かれた、師走の夕暮れの
点描画のような空気感まで漂ってくる感じ。
エマニュエル・ベアールが出ていた
「美しき諍い女」というフランス映画の中で、
「見慣れた世界が、まったく別のものに見える瞬間。
 私は、そんな一瞬を探し続けてるんだ…」というフレーズが
あったように思うのですが、
(いや、もしかして、ミッキー・ロークの映画「ナイン・ハーフ」かも?)
まさに、同じような心境です。
ふつうのカメラで撮った写真は、色があせていくのですが、
心のレンズで捉えた光景は、
輝きを失わない宝石の粒のよう。
ときどき、心の中の宝箱から取り出して、
眺めて遊ぶのも、また楽しいのでした。

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